はじめに

Shade3Dを使用してVRコンテンツを作る、という連載を始めることになりました。
本記事のためにコンテンツを作るというのではなく、今筆者が作成しているコンテンツの流れを追いかける内容になります。
2017年、記事にしている際もまだ現在進行形で作っております。
モデリングではShade3Dを使っていますが、リアルタイムに持っていくためにUnityを使ったり、
当然ながらVR-HMDを使う内容となります。
また、テクスチャを加工するために他のソフトも使います。
それらについて、背景も含めてじっくり書いていきます。
少し長めになりますが、よろしくお願いいたします。

VRは今まさに研究もされて進化していってる最中で、流れが早いです。
第1回目は、2017年現在のVRについて、コンテンツを作るためのざくっとした流れについて書いていくことにします。

 

VR-HMDって何 ?

ものすごい初歩的なことですが、VR-HMDについて。
最近流行ってますよね、VRとかARとか。MRなんてのも出てきました。
VRとはVirtual Realityと呼ばれるもので、日本語では「仮想現実」と訳したりします。
ただ、訳に関しては異論もありますのでここでは「VR」とします。
VRは、コンピュータ上で作り出した3次元空間内に入り込めるかのような概念です。
なんらかの手段で、視界に3次元的な映像を投影します。
これは現実世界ではなく、あくまでも「Virtual(仮想)」です。
広義の意味では、2次元のディスプレイ上に360度動画を再生し、マウスでぐりぐり視点を変えることができる、
というのもVRとなります。
また、視界全体を仮想空間で覆ってしまう(目に映像を投影させる)機械をHMD(Head Mounted Display)と呼びます。
昨今のVRはHMDを頭に固定することで、どこを向いても映像が投影されて、ほんとに世界に入り込んでるような没入感が得られるようになっています。
昔からこの概念はあったのですが(VR自身は、何回も話題にはなって自然消滅を繰り返した歴史があります)、
機材が10万円以内で手に入るようになり、抜群に没入感が得られるようになったのはここ数年になります。
そして2016年、「VR元年」と呼ばれる時代に突入しました。
これは、VR-HMDが市販されるようになり個人でも購入できるようになった時期です。最近です、ホットですね。

「AR」というのも出始めてます。ARとは、Augmented Realityと呼ばれるもので「拡張現実」と訳されます。
これは、現実空間に仮想的に作った3Dを含む情報をオーバーラップさせて、現実に付加情報を与える(拡張する)概念になります。
スマホやタブレットのカメラで特定のマーカー(記号)を撮ると写真のマーカーに合わせて3次元形状が浮かび上がる、
というのもARになります。
昨今では、Microsoft社のHoloLensといった本格的なものも出てきました。
さらに進んで「MR」、これはMixed Realityと呼ばれ「複合現実」と訳されます。
MRは、現実に3次元的な情報を付加させ(ここまではARと同じ)、現実世界もオーバーラップした3次元の仮想情報に影響を与える、
といった相互に作用する状態となります。
ただ、このVR/AR/MRという別れた概念は今後変わってくるかもしれません。
相互の境目をなくしてしまう、という流れも出てきています。

 

今回使うVR-HMD

2017年現在、個人でもコンテンツ作成に使えるメジャーなVR-HMDとしては、
Oculus社のRift、HTC社のVive、まだ開発の段階ですがFOVE社のFOVE、があります。
今回は、Oculus社の「Rift」(https://www.oculus.com/rift/)を使って開発してます。

shade3d_vr_blog_01_01

VR-HMD以外でも、VR用のハンドコントローラー(Riftの場合は、Oculus Touchと呼びます)を使って、
VRの仮想空間内で物を拾ったり投げたりできるようになってます。
ハンドコントローラーによる操作は没入感をさらに高めるため、VRでは今後も必須アイテムとなると思われます。

また、VRをするにあたっては、ある程度の制限/条件があります。

必要なマシンスペックは高い

VR-HMDは、PCにつないで使用します。
コードレスになり、PCもいらなくなるというのはまだ先の話になりそうです。

そして、Riftの場合の最低限必要なマシンスペックは、
GPUがNVIDIA GTX 960 / AMD Radeon R9 290 以降、
CPUがIntel i3-6100 / AMD FX4350 以降、
メモリが8GB 以上、
OSはWindows 8.1以降(Windows 10を推奨)、と、結構高いスペックが必要になります。
また、現在はWindows環境でしか動作しません。Macは対象外になります。

VR-HMDは年齢制限がある

健康上の理由で、VR-HMDはそれぞれ年齢制限が設けられています。
Riftの場合は13歳未満は使用できません。
年齢で開発できない、というわけではなくて、VR-HMDをかぶってプレイさせることはできません。

ある程度の大きさの部屋がいる

昨今のVR-HMDは、頭を動かすだけでなく少しの範囲は歩いても追従してくれます。
「ルームスケール」と呼びます。
部屋内にセンサーをつけることで、HMDやハンドコントローラの動きを計算してくれ、なかなか精度が高いです。
最低でも1.5m x 1.5mくらいの範囲は自由に動き回れる空間を確保したほうがいいでしょう。
筆者はそれでよく物を蹴飛ばしたり、壁(物理)にぶつかってます。

座位でのVRもコンテンツ次第でできるのですが、その場合は臨場感は落ちてしまうと個人的に感じてます。

 

VRコンテンツを作る流れ

さて、VRコンテンツを作るといっても、何をどのように作ればいいの、
というのがまず疑問として出てくると思います。
今回は流れだけざくっと書きます。

* テーマの選定と調査
* テクスチャ/モデリングなどの素材作成
* Unity上でシーンを作る。スクリプトでプログラムを書く
* VR-HMDとしての確認と調整

まだ詳細は決めていませんが、開発したコンテンツはどこかの展示会に出してみようと考えてます。
見せびらかさなくては意味がないですので、、、。
動画サイトで360度VR動画とか見ても、VR-HMDで実際に体験してみない限りは臨場感というか
「その場にいる感じ」を理解することはできません。
これはちょっとの差ではなくて、体験する/しないではぜんぜん違うものです。

VR界隈では、VRが一般に認知される前から有志の方が展示会をやったり、
コンテストを開催したり、輪を広めるための活動を行っておりました。
最近では、企業がVRのコンテンツを展示する場を設けてくれていたりします。
ゲームセンターみたいな感じですね。企業が作ったコンテンツが置いてますので、クォリティーは高いです。
VRについてはまず体験が大事ですので、まだ体験したことない方はそういった場で触らせてもらうのがいいかもしれません。
一気に魅力にとりつかれますよ。

さて、VRコンテンツを作るための流れに戻ります。
今回はざくっとです。

テーマの選定と調査

「昔の日本の風景を仮想空間に作る」をテーマにしてます。
ゲームではなくて、できるだけリアルな空間を体験できる場を仮想空間に作ろうかなと。
テーマ選定は話せば長くなるのでそこは省きますが、
筆者自身が、今は存在しない昔の風景が大好きだからというのが一番の理由です。
好きなものならこだわりたいですよね。
そして、昔の木造建築(木造軸組み工法、かつ、伝統工法)をShade3Dでモデリングしています。
Shade3Dを使いこなしている方は建築に詳しい方も多いですので(と伺ってます)、
その作ってる様子も楽しんでいただければと思います。
VRの場合は、「その場にいる感じ」を体験させることが大事です。
特に「寸法」については、VRで見てみると違和感があればすぐにわかってしまいます。

昔の建物を確認できる場としては、建物園や民家園といったものがあります。
後、博物館でもたくさんの史料とともに再現したものを見ることができます。
博物館は、ある意味、今は現実にはないものを仮想的に見ることができる場、ですよね。
あの雰囲気をVRでじっくり見ることができれば、というのが根底にあります。
博物館、ぜひ行きましょう。個人的にはVRでの体験と近い世界を感じてます。
なお、筆者は週一回くらいのペースで、なんらかの博物館や古い建物が展示されている場所に行ってます。

テクスチャ/モデリングなどの素材作成

Shade3Dは「モデリング」で使用します。
寸法をできるだけ厳密にしたいのと、効率化のため、プラグインを作ったりといった作業を行っています。
VRの場合はゲームに近い、リアルタイム向けのモデリングが必要になります。
また、VRの場合は建物や形状に近づくこともできるので、テクスチャなど手を抜けない箇所があります。
このあたりは、ノウハウがいる点もありますので、後々追いかけていきます。

Unity上でシーンを作る。スクリプトでプログラムを書く

Shade3Dで作成したモデリングデータやテクスチャなどの素材を、Unityに持っていきます。
シーンに配置してVR用のカメラをUnity上で設定するだけで、VRでウォークスルーするコンテンツ、は
できてしまったりします。
プログラムはいりません。ただ、ハンドコントローラでものをつかんだり、
ゲームのように物を拾ってどこかに置くと仕掛けが動く、といったインタラクティブな操作が入る場合は、
プログラムが必要となってきます。

VR-HMDとしての確認と調整

Unityの場合は、VR-HMDに対応させたコンテンツを作るのはすごく簡単です。
シーンにRift用のカメラを配置するか、設定でVirtual Reality Supportedチェックボックスをオンにするだけで、
後はカメラ形状がVR対応してくれます。
これらのVR用の調整はシーンを作っている段階で行いますが、描画が90fps(1秒に90回の描画)を保てること、
操作方法、特に移動方法をしっかり決めておくこと、がすごく大事になります。
ここを怠ると「酔ってしまう」状態になり、二度とVRに触りたくない要因になりかねません。
この部分は、2Dのディスプレイで見るゲームよりもシビアになります。

 

VRコンテンツを作るのは難しい ?

VRコンテンツを作る場合は、モデリング含めた素材作成がほとんどの作業になるかと思われます。
簡単な例ですが、Shade3DでモデリングしたロッジをVR空間に持っていきました。
この形状自身は今回の連載で使用する本番コンテンツではなく、過去に筆者がモデリングしたテストシーンになります。
Shade3Dでモデリングし、fbx形式でエクスポートします。

shade3d_vr_blog_01_02

Unityにfbxファイルをインポートし、テクスチャ画像をインポートしてマテリアル設定を行います。
VR用のカメラを配置して、カメラ側で少し設定を行ってから実行すると、
もうウォークスルーするコンテンツができてしまいます。
実作業は5分もかかりません。
計算時間(lightmapと呼びます)はこれ以外にかかりますが、それを加味しても20分くらいです。

※サイトの仕様上、低画質になっています。高画質版はこちら

まるで木造の建物にいるかのような臨場感です。
上画像は実際にRiftをかぶって操作しているのですが、その臨場感、あまり伝わってきませんよね。
たぶん、臨場感の10%も伝わってないと思います。
このように「VRは実際に体験してみないと分からない」というのはありますが、
VR-HMDかぶったら別世界ですので、それら含めて可能な限り連載で魅力を伝えていければと思います。

Shade3Dを基軸とした連載ですので、もちろんモデリングについて、機能拡張のプラグインについても書いていきます。
今回は、まずはVRの背景と流れを書いていきました。
次回から、コンテンツの素材作成について記事にする予定です。
しばらくの連載、よろしくお願いいたします。

One thought on “第1回「VRコンテンツへの道」

  1. とても魅力があるようです。
    でも、高学歴な方のための操作ソフトのような気がしないでもありません。
    基礎知識と基本動作をうまく使いこなせるようになるには、専門知識を持った方が傍にいて
    注意しながら創作をしてゆく作業となりそうです。
    そんなことを考えると面白いもののようなものでも面白くなくなってしまいそうだから
    このアイデアの動向を読んだり観たりするだけになっている自分です。
    まぁ、僕の年齢があと6ヶ月で60歳という年齢だから、もう無理かなと思ったりしているからそうなるのかもしれません。若い人たちは、もっと、有望な見方をされているでしょう。
    動向に期待したいところです。

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